――― Marky on the WEB

2004/01/03
中学生と対峙する

昨年のクリスマスのこと。
12月25日というすばらしい日に、静岡県のとある中学校にでかけた。
僕は生まれてはじめて中学生を対象にファシリテーターについての研修を行った。

これまで、小中学生は対象にしたことがなかった。はっきり言って、苦手意識があった。
ファシリテーターなんて、難しいだろうし、僕もどうやってしゃべってよいかわからない。

でも依頼はきた。
それはもちろん、僕が招いたことだ。大人を対象にしたファシリテーター講座をするときに、僕は何度かこういっていた。
「アメリカなどでは、小学生のころから会議の仕方についての授業があり、幼稚園のころから民主主義について教えている。日本でも小学校や中学校のころからどんどんやるべきだ。」と。

以前、静岡で行ったファシリテーター講座に、中学校の先生が参加してきた。モチアキさんと呼ばれるその先生と意気投合し、「やはり日本の中学校でも、会議の仕方とかを学びましょう」なんて盛り上がった。

それから、数ヶ月後。ある中学校の校長先生から連絡があった。モチアキさんのお知り合いの方で、ぜひ僕に、会議の進め方や、ファシリテーターについての講座をやってほしいとのこと。学校の授業の一環ではなく、PTA主催の自由参加の講座だ。

依頼を快く受けたものの、僕はどうしてよいか、よくわからなかった。
中学生。それは未体験のゾーンだ。
「研修をするときは、対象分析が大事です」なんて、普段から言っているものの、中学生に対して、いったいどういう言葉を使えばいいんだろう? どんなたとえ話をすれば、話が通じるのだろう? 配付資料は大人向けにつくってあるもの、そのままでいいんだろうか? 僕の(ある種かたよった)中学生時代の話をしたほうがいいんだろうか? などと、ぐるぐると不安が頭を駆けめぐっていた。

なかなか直前になるまで、進行方法も決まらなかった。ファシリテーターという言葉をつかってよいのかどうかも、わからない。うんうんうなりながら準備をした。

どきどきしながら迎えた当日。
会場には80人を越す中学生があつまって来た。ぎゃあぎゃあと騒ぐ男子、がっちりと仲間内でかたまる女子。中学生時代の記憶がよみがえってきた。

緊張を表に出しながら、僕は第一声を切り出した。
「今日は、みなさんにクリスマス・プレゼントをしたいと思います。」
そう言って、「サーカスの象」の話しをした。僕が尊敬するファシリテーターから教えてもらった、自分の可能性を広げてとらえようという、とてもステキな話だ。

そんな導入にはじまり、僕がふだんやっているファシリテーターという仕事がどいういう仕事なのかを説明した。また、「いい会議」を体験してもらうための工夫をいくつかした。会議実習として「何のために修学旅行はあるのか?」というテーマで議論もした。

80人を対象に、僕は大きな声をはりあげ、いつもよりジェスチャーを大きくして対峙した。背中に汗をびっしょりかいた。

やりにくいこともたくさんあった。
配付資料にミスがあると、全員にくすくすと指摘された。問いかけを出しても、ふざけた答え方をするやんちゃな男子がいた。発言をふっても、無口をつらぬきとおす男子がいた。男女で話し合う、ということがうまくできないグループもあった。用意した配付資料の四分の一しか配らなかったし、やらなかった実習もあった。

だけど、基本的に反応は豊かだった。
僕は、自分の言葉が中学生に伝わっていることを実感できて、本当にうれしかった。
それに、中学生という受講生は、たった数時間で、どんどんと「よい会議ができる、よき参加者」として成長していった。

アンケートにはびっしりと感想が書き込まれた。

以下、いくつかアンケートより抜粋

・最初のうちはちょっと気まずかったけど、グループの人の意見を聞いて、あぁこういう人なんだなと思いました。
・「口に2画の漢字探し」や「テニスボールをどれだけ速く全員に回せるか」とかに、かなり燃えた。今回初めての出席だったけど、また来たいと思った。というか、また来てください。僕もまた来ます。みんなで会議することの楽しさがあらためてわかった。修学旅行の会議、サイコーでした。
・「会議について」という内容はあまり考えたことはなかったし、どんなものかと思っていたけれど、青木さんの考えている「会議の仕方」など「言い方」などがわかりやすかったです。いろいろなやり方があったとは思っていませんでした。だからこれからの学級の話し合いでも活かしたいと思います。
・会議は一番大変で、いけんがないとこまることがわかった。
・サーカスの象のお話しはすごく共感しました。人間って「私はできる!!」って思って、何事にも努力している人って、すごい人間として生きていく上でというか、すばらしいと思います。
・僕は今まで「・・・についてどう思いますか?」という問いかけ方しか知りませんでした。しかし今日の青木さんの講演を聞いて、多くの議決方法を知ることができました。生徒会の定例会が1月にあるので、そこでぜひ使ってみたいと思いました。
・会議を上手に行えば、戦争がなくなったり、社会が変わるということは、すごいと思います。


僕にとって、大きなチャレンジであり、かつ、今後の可能性が広がる体験だった。
こういう機会をあたえてくださったモチアキさん、校長先生、PTAのみなさん、そして何よりクリスマスの日にも関わらず、自発的に参加してくれた中学生のみんなに感謝します!