――― Marky on the WEB
青木将幸ファシリテーター事務所

2007/3/9
場を読む、ということ

先日、キープ協会の川嶋さんから「場を見るってどういうこと?」という問いかけのメールをいただきました。なんでも、2007年の環境教育学会で発表なさるようです。自分なりに考えてみて、文章にしてみました。

■場を読めるかどうかで、決まる

ファシリテーターをはじめ、教育や研修や会議に関わる人間にとって、「場を読む」力はとても重要です。お笑いや、営業、ホテルマンなどのサービス業に関わる人間にとっても重要であると思います。

みなさんは、「場を読む」という言葉になじみはありますか?

これは簡単にいうと「いま、何が起きているか? どんな状況かを察知する」ということです。

例えば、会議などで沈黙があった場合。それが「参加者が深く考えている沈黙」なのか、それとも「今、何を話し合っているのかさっぱりわからない沈黙」なのかを見極めることです。この見極めによって、前者であれば、進行役はあれこれ言わずに「待つ」ことで、参加者が考えていることを邪魔しないようにしますし、後者であれば「今、何を議論していて、皆さんに何を考えていただきたいか」を再度明確に提起するなどの適切な対応をします。

また、「研修や教育プログラムなどでは、講師が講義をしているときに、その話の内容がどれぐらい参加者に伝わってるか、を見極めることでもあります。同じ講義でも、参加者の深いところに落ちている場合と、右の耳から左の耳に抜けている場合があります。

この違いを「読む」ことができるかどうかで、「よきファシリテーター」か、「からまわりしてしまうファシリテーター」かが決まる、といっても過言ではありません。

■場を読むとは? 3つの要素

いったい「場を読む」ということは、どういうことなのでしょうか?

僕は大きく分けて3つのことを見ているように思います。

1つは「参加者」、2つめは「時間」、3つめは「進捗・深まり」です。

「参加者」・・・今、参加者がどんな状態かを読みます。参加者ひとりひとりの体調・気分・集中度・納得度・理解度、そして個性や経験などを読むようにしています。

たとえば参加者が「この部屋は暑すぎるなぁ」とか「寒くて凍える」「トイレを長い時間我慢している」といった状況であれば、なかなか話し合いや研修の本題に身を入れることができません。ファシリテーターは、参加者が集中できる環境をつくるために、室温を調節したり、適宜休憩を入れたりします。

また、参加者が「今、どんなことを感じているだろうか?」「どれぐらい理解しているかしら?」「ここまでのところの納得度・満足度はどれほどだろうか?」「今、何に関心が向いているか?」はというのを想像することも重要です。

よく「どうやって場を読むのですか?」と質問されます。僕の場合だと「参加者の体の角度や、うなづきの回数、目のかがやき、目線、そわそわしている感じ」などで感じているように思います。人間は、熱心に学んでいるといきに前屈みぎみになったり、ふんふんと頷いていたり、目を閉じて自分の内側と深く対話していたりするものです。逆に、納得がいってないときは、よそを見たり、首をかしげたり、まゆをひそめたりするものです。そういったものを見るようにしています。

「時間」・・・多くの場合、参加型の会議や学習プログラムを、ある一定の限られた時間のなかで進行する必要があります。せっかくもりあがりはじめたところで、チャイムがなって強制終了!という経験をした方もいるのではないでしょうか? ファシリテーターは参加者の様子や、深まりを見ながらも、ときどき「今、何時か? あと何分あるか?」を見る必要があります。例えば、のこり時間が10分と、わかっていながら、参加者全員にひとりずつ、ゆっくりとコメントを聞いてしまうと、時間オーバーになってしまいます。時間がオーバーしてもよいときは、これでもいいですが、帰りの電車の時間や次の予定などがある場合は、時間ぴったりに終わる必要もあります。

「進捗・深まり」・・・参加者と時間と、最後の一つは「進捗・深まり」を見ます。今回の会議や研修で、話し合うべきこと、深めたい項目のうち、どの位まで深まったのか、を確認していきます。個々の参加者のことばかりに目をうばわれてしまうのではなく、「全体として深めるべきテーマが深まっているか」「参加者間でどんな相互作用がおきているか?」などを見ていくわけです。

この3つを見てゆくことが「場を読む」ことだと考えます。場が読めるようになってくると、適宜必要な関わり(介入という人もいる)を起こしていくことが、できるようになります。参加型の話し合いや・体験型の学習の場合、参加者の状況やその場のありようによって、千差万別の変化が生まれます。事前に計画していたことにしばられるだけではなく、そのときにしか生まれない面白いことやミラクルなことと共に歩んでいるかが問われているようにも思います。

■全体を俯瞰し、個別を凝視する

僕は先輩のファシリテーターから「個別を凝視し、全体を俯瞰すること」が重要だ、と教わってきました。これは難しい言葉ですが、個々人が何を考え、感じているかを敏感にキャッチしながらも、全体として、どういう時間が流れ、どういう深まりが起きているのかに気持ちを寄せることが、大切だ、ということだと捉えています。

ひとりひとりを大切にしながら、かつ全体を見る。なかなか難しいことではありますが、ぜひ今後もチャレンジしていきたいです。

川嶋さん、よい機会をありがとうございました。