――― Marky on the WEB
青木将幸ファシリテーター事務所

2009/08/28
「ワカモノの視点でマニフェストを読む会」レポート

実施日:2009/8/26
主催:青木将幸ファシリテーター事務所
協力:A SEED JAPAN

衆院戦を目前に控えた8月26日「ワカモノの視点でマニフェストを読む会」というワークショップを開催しました。

以下、当日会場に来ることができなかった同世代のみなさんに、少しでもお伝えすべく、レポートします。とくに今回の選挙は重要な節目です。みなさんの投票にとって、なんらかの参考にして頂けると幸いです。

 

■はじまり、はじまり

会場であるA SEED JAPAN事務所に集まったメンバーは合計で24名。自立生活サポートセンター・もやい、国際青年環境NGO/A SEED JAPANに関わっているメンバーが6〜7名ずつと、教員、大学生、事務職、フリーターの方など色々なバックグラウンドの参加者が集いました。なかには「今回、生まれて初めて選挙に行きます!」という方や「自分は19才だけど、次回以降の投票の参考にします」という方も。

ぐるりと自己紹介をした後で、会の趣旨「特定のある党を批判したり応援しようという会ではない」「お互いのことを論破しない」「言えることは何でも言ってOK、聞いてもOK」といったの簡単な主旨・ルールを確認してから、さっそくディスカッションをスタート!

 

(事前にマニフェストに赤ペンチェックしてきた人も)

 

■Q:雇用の問題に真剣に取り組んでいる党ってどこ?

なんといっても近年注目をされているのは非正規雇用や、広がる格差の問題。多くのワカモノに直結する問題です。マニフェストを見たところ自民党をはじめ、どの党も「雇用対策をやります!」とあって、いろいろ書いている。でも、本当のところ、どうなんでしょう?

そんな問いを「もやい」に関わっているワカモノにぶつけたところ「ここ10年ぐらいの間、景気のいい時期だったとしても生活保護を受けなきゃならない人の数は増えてきた。本当に必要なのは、つぎはぎの雇用を増やすことじゃなく、貧困率をきちんと調査して、貧困を減らそう!という政策。なのでマニフェストを見るときに、貧困率の調査を入れようとしているかを見てみました」とのこと。なるほど、正確に状況をつかまないと正しい対策も打てないから、ここはとても大事なところです。

マニフェストを見てみると、自民党は×。民主党は今回から貧困率の調査を入れるというマニフェストに。共産党、社民党は以前からその調査をしようと提案している、とのことでした。

 

■「公務員の人件費を減らすぞー!」 というけれど、、、

民主党は「国家公務員の人件費を2割減らします!」とうたっていますが、実際に行政機関で働いた経験を持つある参加者からは「人件費の減らし方によっては、ゆとりのある高級官僚の給料を減らさず、派遣や非正規雇用の数を増やすというやり方かもしれない。それなら、官製ワーキングプアを増やすことにもつながるので心配だ」というコメントも出されました。なるほど、総額で減らすとはいっているけど、それをどう減らすかについてはあまり明示してない党が多いようです。

また、学童保育や保育士など子育てに関わる行政の仕事が5年までしか勤務できない規定があったり、安上がりで頭数を増やすような現状になっているとのコメントも出され、「保育所をつくります・子育てにお金をつけます」と色々な党が言うけれど、実際には非正規雇用を増やすのであればイマイチ、との声も聞こえました。

 

■どの党も「温暖化対策します」

いずれのマニフェストにも登場するのが温暖化対策。それぞれに数値目標を出して、温暖化対策をすすめようとしているのがわかります。

自民党:2020年までに2005年比で15%減(いちばん消極的)

公明党:2020年までに1990年比で25%減

民主党:2020年までに1990年比で25%減

社民党:2020年までに1990年比で30%減

共産党:2020年までに1990年比で30%減

(主要政党のみ)

ただ、その数字をどうやって達成するかが問題。

「自民党や民主党は原子力をどんどん活用する方向でCO2削減するつもり。そうであれば、ちょっと問題ではないか」といった心配の声も。

「そもそも自民・公明は高速道路1000円だし、民主党は高速道路無料化!としているけど、そんなことをしたら自動車由来のCO2はガンガン増えるに決まっているじゃないか。それでよくこんな削減目標が出せるようなぁ。大きな矛盾だ」というツッコミも入ってました。

猫もしゃくしも温暖化って感じですが、ただ一つ評価できるのは数年前だったら各党が温暖化防止の数値目標をきちんと出して競い合う、なんてことは考えられなかったよなぁということ。時代も変わってきつつあります。A SEED JAPANをはじめいろいろなNGOが明確な数値目標を求めつづけてきた甲斐もあったという声もありました。

 

 

■日本の農業を守るのはどの党?

お次は私たちの暮らしに欠かせない大切な農と食の問題。

民主党が目玉の一つとして出して注目を集めたのは「農業の戸別所得保障制度」。それぞれの農家さんの所得を保障しようというもの。自民党も「農家の所得を増大させます!」と言ってるけど、いったい何がちがうのか? という疑問も出されました。

するとある参加者から「民主党はじかに農家さんに支払うのに対して、自民党は農協などの組織を通じてお金をいれてゆく。その組織にお金や利権がじゃぶじゃぶ落ちているかどうかが違うんだって朝日新聞で書いてたよ」というコメントがあり、「おー、なるほどぉ。それが違いかぁ」との声も。

ちなみに自民、公明、共産党の3党は食料自給率を50%を目標に、社民党は60%を目標にしています。「民主党のマニフェストには、<日本の食料自給率は低すぎます>、という事実のみが書いている。そりゃわかってんだよ、民主党はどうするの?を知りたいよねぇ」という発言がありました。(補足:あとでWEBを見ると10年後に50%、20年後に60%を目指すと民主党が考えていることを発見しましたが、なぜおおっぴらに配るものに書かないのかなぁ?)

会場には農業に詳しい参加者も何人かいて「自給率のことを見ていくと、穀物の自給が低いのが明らか。これは、私たちが肉をたくさん食べるライフスタイルを変化させないとなかなか改善しない問題だ」というコメントも。

そういえば「ベジタリアンを増やします!なんてうたっているマニフェストはみあたらないなぁ」なんて皆で笑いました。そりゃそうだ。

環境問題も農業も基本的には国の産業構造・外交姿勢なんかが影響していて、日本が自動車や電気製品を世界に売っていこうとすると、バーターで海外の農産物をいれないといけない事情があったりする。アメリカの安全保障のもとにいるから、アメリカの農産物を買わざるをえなくなってきた歴史なんかもある。環境や農業などはそういった事情で大きなところから左右されているんだと。問題を根本から解決しようと思ったら、この国の基本的な構造をどうしていくんだ、という視点が大事なんだと話し合いました。

 

■みんな、政権交代に期待している?

終盤、ある参加者が「みんな、政権交代に期待している?」と、問いかけました。

じゃあ、全員で期待度を手の高さで表そう!ということで、今回の政権交代にとても期待している人は高―く手を、期待度が低い人は低―く手を挙げてもらうことにしました。90点、80点ぐらいの人もいるが、40点、50点ぐらいの人も。平均すると60点強ぐらいだったでしょうか。アメリカのオバマ政権誕生のような期待の高さ、沸騰するような熱はなさそうなかんじ。

むしろ「民主党に勝たせすぎるのは心配」「自民、民主以外のユニークな政党が消えてしまうのは問題だ」という声があがり「なるほど、そうか」と手をうつ人もいました。

 

その他、なかなか書ききれないものもありますが、以下のような意見も出ました

 

【各党の印象について】

・どの党も「日本をこうします!」というビジョンが見えないなぁ

・GDPの増大、経済成長を柱にする以外の観点を出しているほぼ党はないね。やっぱりそれが前提なのか

・田中康夫さんの新党日本が経済のマイナス成長も容認するようなコメントを聞いたことがあるけど、やっぱり少人数の政党は思い切ったことを言える

・自民党が民主党へのネガティブパンフレットを出して、配りまくっているけど、あれどうなの?(品がない、という声も)

・自民党はデザインをよくして、都会のワカモノに受けいれられようと思ったマニフェストになっている。なんか<かわいさ>で売ろうとしているね。従来の支持基盤がゆらいでいるってことだよね

・民主党が特別会計などを全部みなおしてくれるんだったら、一度政権をとらしてもいい

・今回は投票率も高く、おそらく民主党中心の政権になるだろうけど、数年のうちにこけるような予感がするね。マニフェストをしっかり読んだ層や、しっかり考えている市民の支持を得られないと次の選挙でまた逆転しそうだね

 

【マニフェストについて】

・はじめてマニフェストって読みました

・マニフェストを読んだだけでは、ようわからんかった

・マニフェストを読み始めたが「これって党のコマーシャルペーパーだなぁ」という気がして読む気がうせてしまった

・数年に一度の選挙のときに、ちらりとマニフェストを見るだけじゃ分からないねぇ。やっぱり政治は継続してみていかないとね

・いろんなNGOが数年前に一生懸命やっていたことが各党のマニフェストに掲げられるようになってきたってのはいいこと

・市民サイドでこの問題については見てますよ、いい政策は評価しますよ!、こんなマニフェストはどうですか?といった声をあげてゆくのがよい政策をつくることに繋がるんじゃないか

 →継続して勉強会をしよう! ワカモノがやっているNGO同士で一緒にやろうの声も

・これだけ「あれやります、これやります」って書いてあるけど、本当にやってるかどうかは、これからチェックしていきたいよね

・そういう意味では公明党のマニフェストだけが「2007年のマニフェスト一覧と、どれだけやれたかの進捗」を付けていて、えらいなぁと思う。ただし「96.5%が実現&進行中」ってのはちょっと自己評価が高いけど。

・ある政党の政策のなかに、これはやってほしいけど、これはやってほしくないってのが一緒に入っていて、選ぶのが難しいなぁ。条件付き投票とかってできるといいね

 

【会を終えての感想】

・環境問題も農業も貧困も、実は外交とも大きく関係しているということが分かった

・今回はなんか雰囲気で民主党に入れよう!と思っていたけど、ちょっとよく考えてみます

・こんな会を20才になる人が多い場所(大学とか)で、どんどんやれるといいな。選挙権はもらったけど、どういう視点で判断したらいいか分からないワカモノは多いはず

・もうちょっと深いレベルでじっくり話し合いたかった

・途中で難しくなったから、これぐらいのレベルがちょうどよかった

・気になることがなんでも聞けてよかった

といった感想が聞かれました。

とても全ては書き切れませんが、当日はこんな声が聞こえましたよ、というレポートでした。ご参加いただいたみなさん、協力していただいたもやい・A SEED JAPANのみなさんありがとうございました!

また、こんな議論をしたワカモノたちがいるそうだよっていうことをお知り合いに転送していただけると幸いです。